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蔵書一万冊

「一万三千冊(そのうち和本七千余冊)の蔵書を、いちいち運び出す時間はむろんないので、私は思い切って二階の窓から裏庭に投げ下した。(中略)テニスコートの中央に堆く積みあげられた蔵書の大きな山から、もうもうと煙があがり、下のほうからははげしい火勢が噴出していたのが見える。それはもう、近寄ることを峻拒する高熱をばら散きながら燃え下がっていた。ソ連兵たちは、投下した本を片っ端からこの火の中に投げ込んでいたのだ。」北小路健『古文書の面白さ』P.88-89

敗戦の満州で、満州出版文化研究所に勤めていた国文学者北小路健ソ連兵に蔵書一万三千冊を焼かれた。その中には稀覯本として学界に知られていた古写本や古版本もあったという。すべて灰に帰した。その後、北小路は豚肉を売って生活をしのぐ。北小路健の自伝『古文書の面白さ』は、蔵書1万数千冊を焼き捨てられた壮絶な国文学者の自伝である。京都ノートルダム女子大学の資料展示図録『終戦時新京蔵書のゆくえ』は、こうした敗戦後の満州、資料保存の問題を扱った。

 

古文書の面白さ (新潮選書)

古文書の面白さ (新潮選書)